[ブログトップ固定]著書の正誤訂正
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日本心理学会第88回大会が、2024年9月6~8日に熊本城ホールで開催されました。中島ゼミ関係としては私が「身体的侵襲によらない不快感に基づく味覚嫌悪学習としての中毒他個体効果―ラットの情動伝染の視点から―」(中島ゼミ2022年度卒業生の吉田真由さんが卒論研究として取り組んだもの)を、助手の陳香純さんが「飼育下ハンドウイルカにおける鏡像反応と自己認知テスト」(中島ゼミ昨年度卒業生の藤山実玖さんが陳さん指導下で卒論研究として取り組んだもの)をポスター発表しました。
3日間とても暑かったのですが、会場は広くて快適でした。お土産物売り場やフードコートもあり、大変便利でした。徒歩数分のところのホテルに投宿したので、移動も楽でしたし、繁華街にも近く、知人と懇親の会を持つにも最適でした。なお、初日夕刻にあった熊本城(修復中)の貸切見学ツアーにも参加しました。
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金沢大学の谷内通先生より、名誉教授の小牧純爾先生が7/26(金)早朝に逝去(享年88歳)されたとお知らせを頂きました。脳梗塞とその後遺症のためこのとです。謹んでお悔やみを申し上げます 。 小牧先生には、私が慶應義塾大学の大学院生の頃より、日本動物心理学会でお会いした際に色々と励ましていただきました。四半世紀前に金沢大学で主催された日本動物心理学会第59回大会(1999年5月)の際に、実森正子先生(当時:千葉大学教授、現:同名誉教授)と3人で昼食を食べながら、動物心理学研究の今後についてご意見を拝聴したことを思い起こします。小牧先生のご経歴などやお考えについて、10年前に『動物心理学研究』誌に掲載されたインタビュー記事[こちら]をあたらめて熟読しました。 なお、小牧先生は動物心理学会を昨年度退会されているため、同誌に追悼記事は掲載されません。
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2024年7月21~26日チェコ共和国プラハ市で開かれた第33回国際心理学会議に参加しました。7月19日の夜に関空を発ちエミレーツ航空のドバイ経由で20日午後に現地着。ホテルに荷物を置くと、徒歩で行ける旧市街を散策しました。
翌21日の開会式は午後からなので、午前中はカレル橋を渡ってプラハ城を見学しました。ミュシャがデザインしたステンドグラスがある教会がありました。
国際心理学会議の開会式は毎回、趣を凝らしたパフォーマンスがありますが、今回は光のマジックショーと弦楽四重奏でした。開会式後のパーティでは神戸学院大学の清水寛之先生らとお会いしました。日本人もたくさん参加されていましたが、パーティ会場の構造上、多くの人とお話しできませんでした。
私の発表は大会3日目の午後、「ラットとマウスに条件性味覚回避を確立する"人道的"手法」と題するポスター発表です。摂食・摂水制限を行わないラットやマウスに新奇な餌を与えて、回転カゴで自発的に走行させるという手続きで味覚嫌悪学習(条件性味覚回避)を形成するという手法を紹介したもので、「嫌悪処置なしで嫌悪学習を生じさせる」という意味で「人道的(humane)」と銘打ちました。
その日、ホテル近くのレストランのテラス席で、東京国際大学の高砂美樹先生と星薬科大学の川崎勝義先生らと夕食を注文した直後、東北大学の阿部恒之先生(日本心理学会理事長)がお一人でレストランに来られたので、同じテーブルにお誘いして一緒にチェコ料理を楽しみ、夜のプラハを皆で散策しました。
国際心理学会議は4年に1回(夏のオリンピックの年)に開催される心理学の国際会議で、2020年にチェコ共和国プラハ市で開催される予定でしたが、新型コロナ感染症のため開催が1年延期され、2021年に第32回国際心理学会議(ICP2020+1)として、現地とオンラインのハイブリッドで開催されました。しかし、現地参加者が少なかったのでしょう。会議総本部である国際心理学連合と現地主催者(チェコ心理学会)の協議によって、2024年の第33回もプラハ市で「リベンジ開催」されることになりました。今回は、現地参加を主として一部オンライン参加も取り入れた形式でした。
チェコ出身者としては画家ミュシャや作家カフカが有名です。心理学関係ではフロイトやウェルトハイマーもチェコ生まれです。屋根から吊るされたフロイト像のある通りで記念撮影しました。いずれまた訪れたいと思う素敵な街並みのプラハを27日に立ち、28日に帰国しました。
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Learning and Motivation誌の第87巻(冊子体は2024年8月発行)に論文が掲載されます。電子版では本日出版され、[こちら]から要旨が読めます(なお、本日から50日間は本文も無料で読めます)。
ラットやマウスを用いた行動科学・認知科学・神経科学・医科学・薬理学などでは、もっぱら雄個体が用いられてきました。雌個体では性周期等の影響があり、実験統制上それは好ましくないノイズだと考えられてきたためです。しかし近年では、そうしたノイズはそれほど大きくなく、雌雄ともに使用すべきだという意見も出てきています。それと同時に、性差への関心も高まってきています。本論文は、ラットの味覚嫌悪学習における性差を検討したものです。実験1と2では催吐剤である塩化リチウムの注射、実験3では回転カゴ走行を気分不快処置として用い、人工甘味料サッカリン溶液への嫌悪を形成しました。その結果、体重あたりの摂取量を指標としたところ、雌よりも雄のほうが学習が速いことがわかりました。また、実験2と3では処置により生じた気分不快の程度をカオリン粘土の摂取量で測定し、気分不快の程度には性差がないことを明らかにしました。さらに、実験4では、サッカリン本来の好みの性差では味覚嫌悪学習の性差を説明できないことを示しました。したがって、サッカリン知覚、味覚嫌悪学習、回避行動表出のいずれかの能力に性差があるのでしょう。なお、実験1~3は私の計画・指導下に2022年度春学期卒業の李夢巍さん(現:大阪大学大学院医学系研究科大学院生)によって実施されたものです。
Nakajima, S., & Li, M. (2024). Saccharin aversion learning in male and female laboratory rats. Learning and Motivation, 89, 102019.
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ラットのチーズと根菜の好みを、同時選択テストで食べた量(重さ)から検討した論文を学科紀要に発表しました。中島ゼミ2020年度卒の名和明日香さん、2021年度卒の寺川彩華さん、 2022年度卒の上野明日香さんが卒論研究で行った諸実験のうち以下の5実験について、中島が再分析して紀要論文化したものです。
実験1:カマンベールチーズ、チェダーチーズ、ゴーダチーズ、モッツァレラチーズ
実験2:3種類のカマンベールチーズ(明治、雪印、ジェラール)
実験3:3種類のQBBチーズ(プレーン、カマンベール入り、アーモンド入り)
実験4:サツマイモ、ジャガイモ、ニンジン
実験5:サツマイモ、サトイモ、ナガイモ
なお、関連する中島研究室の論文として、2015年に学科紀要に発表した「ラットおよびマウスにおけるチーズ選好」と学部紀要に発表した「マウスにおけるチーズ選好」、2022年に学科紀要に発表した「実験用ラットの食の好みに関する探索的研究」と学部紀要に発表した「実験用マウスとラットの食の好みに関する研究―チーズに代わる魅力的な餌を探る―」があります。
中島定彦・名和明日香・寺川彩華・上野明日香 (2024). 実験用ラットのチーズと根菜の喫食に関する探索的研究. 関西学院大学心理科学研究, 50, 21-28.[無料ダウンロード]
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上智大学教授の岡田隆先生から『生理心理学 第3版―脳のはたらきから見た心の世界―』(岡田隆・廣中直行・宮森孝史・岡村陽子著、サイエンス社、2024年5月刊、税別2,400円)をいただきました。コンパクト新心理学シリーズの1冊ですが、シリーズの中で最も版を重ねている本になります。1つ前の第2版では、公認心理師の学部科目が「生理・神経心理学」となったことに対応して、初版よりも神経心理学の内容を増やしていましたが、第3版でもこの傾向がさらに進んで、臨床との結びつきをより強く意識した内容になっています。私の手元に今ある初版と比べてページ数が少し増えていますが、薄い紙(といっても普通の教科書よりは厚め)になっているので、本自体はむしろ少し薄くなっていて、「コンパクト」の名に偽りがありません。図も見やすくなっています。
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帝塚山学院大学准教授の沼田恵太郎先生と明星大学准教授の丹野貴行先生から『心理学概論アップデートー古典とその後の研究から学ぶ日常に生きる心理学』(天谷祐子・小川健二・古川洋和編、ミネルヴァ書房、2024年月刊、税別2,800円)をいただきました。あとがきによれば、本書は日本心理学会の若手の会の企画で出版されるもので、編者も執筆者も全員若手です。「心と脳」「認知」「学習」「欲求」「パーソナリティ」など10章で構成されていて、各章とも、まず普通の心理学教科書にも掲載されるような内容を「Old」として解説し、章の後半で最近の研究をNewとして取り上げるという形をとっています。Newの記事に必要なページの分、Oldのページが抑制されており、Oldで取り上げる当該研究領域での基本知識が限定的になったり、説明不足な点が否めません。したがって、これを心理学の最初の1冊とするのは難しいと思いましたが、すでに心理学の入門を学んだ学生が、自分の関心を見つけるためにはよいかもしれません。沼田・丹野の両先生は第3章「学習」を共同執筆しています。面白いのは、心理学の入門教科書だと触れないケイミンのブロッキングや、VRスケジュールとVIスケジュールの反応率比較の話までOldで言及し(その分、学習の章で通常言及する項目がかなり省略されています)、Newではさらにその先の研究を紹介しているところです。新しい話を知りたい3年生以上の学生には向いているかもしれません。
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