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Anthrozoös誌に論文掲載

Anthrocover国際人間動物関係学会が発行する英国の学術誌Anthrozoösの第26巻第4号(12月号)に下記論文が掲載されます(注1)
Nakajima, S. (2013). Dogs and owners resemble each other in the eye region. Anthrozoös, 26, 551-556.

われわれは「犬と飼い主は顔が似ている」という研究報告を2009年に同誌に発表しました(「こちら」を参照)。新聞各紙で報道いただいたほか、ネットニュースやテレビの情報番組でも取り上げていただきました。この研究はその後もテレビのバラエティ番組などで紹介されることが多く、こうした話題に関する一般の方々の関心の高さを感じます。

さて、今回の論文では犬と飼い主の顔が似ていると判断されるには目の部分が重要であることを、40頭の犬とその飼い主のカラー写真(注2)を使って行った5つの実験の結果をもとに明らかにしました。すべての実験で用いた方法は基本的に同じで、次の通りです。

[方法]

Dogownereye犬と飼い主の写真40組を、正しく組み合わされた犬と飼い主のペア20組(正セット)とペアを入れ替えた20組(誤セット)に分け、「犬と飼い主がより似ている」のはどちらのセットかを、事情を知らない合計547名の判定者に回答してもらいました(注3)。第1~4実験は関西学院大学の大学生が判定者を務め、第5実験は犬に関する講演会出席者の方々(22~70歳)が判定者でした。

5つの写真条件を調べました。そのままの写真を用いた場合(隠しなし)、飼い主写真すべての目の周辺を黒線で隠した場合(飼い主目隠し)、飼い主写真すべての口の周辺を黒線で隠した場合(飼い主口隠し)、犬写真すべての目の周辺を黒線で隠した場合(犬目隠し)、飼い主写真・犬写真すべてについて目の周辺だけ示した場合(目だけ)。各条件の写真の例を左上に示します。

[結果]

Eyedogowts_3
実験の結果は上の表の通りです(クリックで拡大)。表中の右の数字は各条件の判定者数、左の数字は正セットを選んだ人数、下の数字は正セットを選んだ割合(パーセンテージ)です。赤字で示したのは、いずれも偶然水準である50%よりも統計的に見て有意に高い値です。なお、判定者の性別や犬の飼育経験、犬好きかどうかは結果に影響しませんでした。

そのままの写真を用いた場合、67~80%の判定者が、正セットは誤セットよりも「犬と飼い主がより似ている」と答えました(注4)。飼い主の目を黒線で隠したり、犬の眼を黒線で隠したりすると、正セットを選んだ人は50%前後でした(たまたま偶然にそれを選んだということを意味しています)。いっぽう飼い主の口を隠しても結果にはほとんど影響しませんでした(73%が正セットを選びました)。また、犬の目と飼い主の目だけ見せても69~76%の人が正セットを選びました。これらの結果から、「犬と飼い主が似ている」と判断するには目が重要であることがわかります(注5)

[本研究の独創的な点]

「犬と飼い主の顔が似ている」という研究は、われわれの2009年の報告のほか、米国やベネズエラでも行われていますが、本研究は以下の点が新しいといえます。

(1)「似ている」と判断するのに、顔のどの部位が重要かを明らかにしたこと。

(2) 過去研究では完全に排除できなかった可能性を排除できていること。例えば、飼い主と犬種の「お似合い度」の先入観や、飼い主と犬の肥満度の類似性などに基づいて判定者が選択しているのであれば、目を隠しても選択は良いはずです。また、目だけの写真で判定者が偶然レベル以上に正セットを選べることも説明困難です。

今後の課題としては、目のどのような特徴が「似ている」と判断するのに重要なのかについて明らかにする必要があるでしょう。


注1:日本時間で10/25の午後6時に[こちらのページ]に当該号もリスト表示される予定でしたので、その時点で報道解禁としましたが、出版社のシステム改修により同ページでの表示が遅れているようです。当該号が未表示の場合は同ページの[fast track articles]をクリックして下さい。オンラインファースト論文一覧が表示され、論文題名をクリックすると要旨が読めます(定期購読者は本文もダウンロード可能)。なお、オンラインファーストでの公刊は10/1付になっています。

注2:2009年に発表した論文で使用したものと同じ写真(2006年5月14日の日中に屋外で開催された愛犬団体の集いに参加した飼い主と犬の顔写真)です。被写体の選択にバイアスが入らないように、写真撮影の依頼は撮影隊が出会った飼い主50名すべて(50名に達したところで依頼終了)に行い、全員から快諾を得ました(研究目的を知ると飼い主の表情に影響が出るかもしれないので、飼い主には研究目的を撮影後に告げました)。50頭の写真のうち、雑種や両目が映っていないものを除くと、残ったのは40頭(すべて純血種)でした。なお、いずれの実験でも、写真の配置などが結果を歪めることがないよう配慮しています。

注3:すべての写真は1枚の紙にカラー印刷して配布しました。半数の判定者は、正セットが左側、誤セットが右側に印刷されており、残り半数の判定者はその逆の位置に印刷されていました。

注4:これは2009年に発表した論文の実験2の「類似度判定課題」と同じもので、そのときの結果(66%が正セットを選択)とほぼ同様の結果になりました。なお、同一条件でも実験によって選択率がやや異なっているのは、判定者の課題への動機づけなどの違いによるものだと思われます。

注5:ここでは単純に「目」と書きましたが、実際には「目およびその周辺」です。写真の例をご覧ください。

なお、「すべての犬と飼い主は目が似ている」ということではありません。似ていないケースや、目以外の部位が似ているケースもあるでしょう。言うまでもありませんが、「総じて似ている」ということです。また、「似ている」というのは「同じように見える」という意味であり、形態的・物理的同一性については顔の形態学を専門とされる方々による解明を期待します。

本研究は科学研究費など公的助成により行ったものではありませんので、「こんな研究をするのは税金の無駄遣いだ」という批判は当たりません。念のため書き添えておきます。

 

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